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【感想・考察】小説『ナラタージュ』心から愛していたのはあなたでした。【ネタバレ有】

 

こんにちは、かなへびです。

 

映画『ナラタージュ』、公開直前ですね!

だからというわけではないんですが、島本理生さんの小説『ナラタージュ』を読みました。

確か半年ほど前に書店でぶらっとしている時、教師との恋愛ものということで購入し積読したまま時が経っていました。映画も公開ということで読んでみようと思い立ったわけです!

 

今回はネタバレも含む感想をお伝えしようと思います。

 

まずはネタバレなしのあらすじから〜

 

 

【あらすじ】

大学生の主人公、工藤泉にある時高校時代頼りにしていた葉山先生から電話がかかってきた。何かと思うと、在校生の演劇部の手伝いをして欲しいというお願いだった。泉は快く引き受け、同じく卒業生の志緒、黒川、また黒川の大学の友人である小野くんと毎週土曜日だけ演劇を手伝う日々が始まる。

泉は高校時代から葉山先生に好意を抱いていた。それに、葉山先生のヒミツを、泉だけが知っていた。

 

 

 

まあ序盤はこんな感じで、ここから何やかんやで葉山先生と泉とその友人たち、後輩とお話が進んでいくわけですね。

 

映画を観る予定、もしくは今後小説を読む予定で、まだ内容を知りたくない!!って方は、見終わった後でまたこのブログをお読みください!

 

 

 

 

〜ここからネタバレ含む〜

 

 

まず最初に柚子ちゃんのお話からしますね。

これに関しては序盤からどんどん伏線がおかれていました。伏線どころかもう明らかに様子がおかしかったです。 泉と新道くんと一緒に学食へ行った時とか。

そしてついに家出をしちゃう。しかし何もなかったかのように笑顔で戻ってくる。

一体柚子ちゃんに何があったの…?と読者を煽るけどなかなか真相は明らかになりません。

 

そこで最後にドーン、ですね。

最後の方はもうだいぶ登場人物に感情移入している頃ですから、何でこうなっちゃったの!?と悲しくなりました。

新堂くんも葉山先生もきっと一生懸命どうしたらいいのか考えていたはずです。

新堂くんへの手紙は、柚子ちゃんなりの最後の「助けて」の知らせだったんじゃないかと思うんです。ずっと誰にも言えなくて、苦しくて、だけど誰かに言いたい。新堂くんにならば言える。そう思って書いたのでしょう。

 

かといって助けに行かなかった新堂くんも悪いわけではない。助けようという気持ちがあってもなかなかすぐに動ける人間なんていません。

柚子ちゃんだって、助けにきてくれなかった新堂くんを恨んではいないと思います。きっと。最後に好きだった新堂くんに全てを伝えられて少しスッキリしていたんではないでしょうか。これで悔いなく死ねる、と。

 

新堂くんの気持ちもさることながら、葉山先生はきっと大人として、教師として救えなかった責任感を強く感じているだろうと想像がつきます。

 

正直、序盤の伏線が気になってはいたものの、まさか死んでしまうなんて思っていなかったので結構ショックを受けました。そのため最初にお話しさせていただきました。

 

 

 

葉山先生←泉←小野くん、という関係ですが、小野くんが実直ないい人で葉山先生の方が少しクズっぽい印象を抱いていました。

小野くんはきっと若さや家庭環境などで人の愛し方がイマイチ分かってなかったのではないでしょうか。ただ泉を好きな気持ちは本物だったのでしょう。それ故に、自分の方だけを見てくれない泉に腹が立って無理な性行為などを迫ってしまった。

小野くんの行動によって傷つけられた泉ももちろん辛かっただろうけど、そんなことをしてしまっている小野くん自身も傷ついていたのでは…と思ってしまいます。

登場人物のポジション的に小野くんを悪者にする必要があったのでしょう。

 

 

葉山先生ですが、優しすぎるほど優しい。優しさは時に人を傷つける、という言葉が似合う人です。

 

元奥さんと実母と色々あった、と泉に打ち明ける。君だけには教えるけど、なんて言われたら泉が葉山先生に好意を抱くのも当たり前でしょう。

なのに、僕に人を愛する資格はない、何て人を遠ざけるような態度。 

泉は、まだ奥さんと離婚してないと伝えられ、信じていた葉山先生に裏切られる。

自分だけが頼りにされていた、と思っていた分、侮辱されたような気持ちもあった。

葉山先生は人に迷惑をかけまいとするあまり、人を傷つけてしまうような不器用な人ですね。

 

 

蛇足になるのですが、実は私も高校時代に教師に恋をしていました。

憧れや尊敬、安心して関われる大人として見ている側面もあったため、純粋に恋をしていたと言えるのかどうかはわかりません。

もちろん泉と葉山先生のようにキスしたりそういうことは全くありませんでしたが(笑)

だけど、この本を読んでいく中でそういう淡い思い出をすごく思い出してしまいました。きっと泉も最初は尊敬とか信頼とかそういう気持ちからだったんだろうな〜とか、すごい感情移入して読んでいました。

私が恋をしていた先生も、葉山先生のような、どんな生徒にも等しく優しく、自分が間違っていると思うことには絶対従わないような芯のある先生でした。

だけど、誰にでも優しい、というのは時に残酷でもありました。

その感情がこの小説にも書き表されていて、すごく共感してしまいました。

 

p126 - 一瞬だけ、志緒や柚子ちゃんが彼と個人的な話をしているところを想像した。そうしたら胸の中に動揺が湧き上がり、いても立ってもいられなくなった。先生なのだから当然だと頭では理解していても彼女たち相手にまでそんな苛立ちを覚えてしまう、そんな自分が嫌になった。これではまるで世界中で自分と彼しか大切じゃないみたいだ。

 

この部分です。誰にでも優しいということは、自分に向けられている優しさは他の人にも向けられているということです。

自分に向けられた優しさが特別でもなんでもないと思った時、もう辛くて辛くて心が締め付けられるようでした。実際に私がそう感じたことがあるから、葉山先生に対しては若干のもどかしさを感じてしまいました。

泉のことを大切に思っているならもっとそれを伝えて欲しい!とずっとうずうずしていました。

先生を好きになった経験がある人ならこの気持ち、理解してもらえるかもしれません…。

 

 

最終的に泉と葉山先生は両思いなのに、一緒にはなりませんでした。

奥さんの元へ戻って行ってしまうという残酷さ。

でもお互い別のところで別の幸せを得る、そういう愛の形もアリなのかなあ。

きっと泉の心には葉山先生がつけた大きな跡が残っていて、それがずっと泉を支配していくのでしょう。

 

 

 

今回はあまりに感情移入してしまって蛇足が長くなりました…。失礼いたしました。

映画が公開されたらそちらも観に行ってみようかと思います!

有村架純さんや松本潤さんがどういった演技を見せてくれるのか期待です!

 

 

 最後までお読みいただきありがとうございます。

それでは!